暖冬とはいえ東京でも雪が降りました。春が待ちどおしいですね。
今回は「春を感じる本」を持ち寄りました。みなさんは「春」で思い浮かべる本がありますか。
紹介された本の中から、今回はこの本をお勧めします。
『桜守のはなし』佐野 藤右衛門 講談社 2012年
1928年生まれの佐野藤右衛門さんは、1832年から続く京都の造園屋の16代目。14代から桜の育成に力を入れ、日本中の桜の保存、新種の発見につとめ、パリのユネスコ本部の日本庭園もイサム・ノグチと共に手掛けました。
花の季節の春だけではなく、夏には害虫の駆除や病気の手当をします。桜は種から育つ種と、接ぎ木で育つ種があります。接ぎ木で育てるためには人間の助けが必要で、乾燥させないよう注意を払います。秋の紅葉も種類によって色が違います。冬は桜も内側に向けエネルギーを蓄えます。そのエネルギーを基に植え替えをします。
机に向っての勉強だけではなく、代々継いできた技術と桜に向けた愛情が日本中に見事な桜を咲かせているのです。
今回は会員外の参加者も迎えてたくさんの本が紹介されました。読んでみたい本はありますか?
紹介された本の中から、今回はこの本をおすすめします。
『チームふたり』 吉野万理子作 学習研究社 2007年
6年生で卓球部キャプテンの大地は、最後の試合のダブルスで、真面目だけど実力はまだまだな5年生の純と組むことになりました。どうしても勝ちたい大地は先生の決定に納得いかないままでしたが、家族やチームメイトに事件が起こり、卓球どころではなくなってしまいます。大地は純とダブルスを組んで最後の試合に出場できるのか?
大地や家族、純、卓球部のメンバー……。登場人物それぞれの立場が丁寧に描かれていて、読み進めていくと「チームふたり」の意味が深いものであることもわかります。
シリーズの続きは卓球部の後輩たちが主人公となっていき、それぞれが成長していく様子も見どころです。ぜひシリーズ全5巻(新装版は全6巻)を読んでみてください。 (Y.H.)
参加者それぞれが持ち寄った「こわい本」が紹介されました。
「こわい」にもいろいろありますね。
紹介された本の中から参加者が「これは怖い!」と感じた本はこちら。
『黒猫・黄金中』(少年少女世界文学館13)
エドガー・アラン・ポー作 松村達雄・繁尾久訳/講談社/1988
推理小説の父とよばれているポー。その作品の中には「黒猫」のように恐怖を扱ったものも多くあります。「黒猫」の怖さの底にあるものは、人の心の弱さ、その心理を見事にあぶり出したところです。主人公は幼いころから気のやさしい動物好きの子どもでした。それが大人になって酒におぼれ、性格もすさみ、動物をいじめるようになり、ついには最愛の妻まで自らの手にかけてしまう。その弱さを静かに見つめ主人公の犯罪を決して許さないのがこの黒猫の存在です。最後の場面、妻の死体が壁の中から現れ、その頭の上に口をかっと開いた、その胸に白い絞首台が描かれた黒猫の怖さが脳裏から離れません。人間を描く文学性の高さが100年以上も読み継がれているのですね。日本の怪談にも、似た話はたくさんあるような・・・。 (S.M.)